岩手医科大学歯学雑誌
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症例集積研究
骨吸収抑制薬関連顎骨壊死を示す担癌患者25 例の臨床報告
山谷 元気宮本 郁也阿部 亮輔小松 祐子角田 直子川井 忠小川 淳千葉 俊美山田 浩之
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2022 年 46 巻 3 号 p. 117-124

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抄録

【目的】本研究は,担癌(がんを体内に有している状態)患者における骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(anti resorptive agents-related osteonecrosis of the jaw;以下 ARONJ)の病態,治療法および治療成績を評価することを目的とした.

【対象・方法】2012 年1 月から2016 年12 月までの5 年間に当科でARONJ と診断されたのは62 例であった.このうち悪性腫瘍を原疾患とする25 例を対象として,使用された骨吸収抑制薬の種類,ARONJ の発症部位と誘因,初診時のARONJ の病期,治療法と成績について検討した.

【結果】骨吸収抑制薬の種類はビスホスホネート製剤が18 例(72%),デノスマブが9 例(36%)でそのうち重複使用が2 例(8%)であった.ARONJ の発症部位は,下顎単独が20 例(80%),上顎単独が 4 例(16%)で,上下顎同時発症が1 例(4%)であった.発症リスクでがん以外の全身的リスク因子を有していた症例は8 例(32%)で,すべて糖尿病であった.最も高頻度な局所性リスク因子は,抜歯で10 例(40%)に認めた.初診時のARONJ の病期分類ではStage 1 が5 例(20%),Stage 2 が 18 例(72%),Stage 3 が2 例(8%)であった.Stage 1 では全例(5 例)に保存療法が選択された.Stage 2 では18 例中12 例に保存療法,6 例に外科療法が選択された.Stage 3 では全例(2 例)に保存療法が選択された.保存療法全体での奏効率は47.8% で,外科療法の奏効率は66.7% であった.

【結論】本研究結果からARONJ に対する外科療法の奏効率は高値を示した.担癌患者の予後は個人間の差異が大きいため全身的,局所的な状態を充分に見極めた上で治療法を選択する必要がある.

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2022 岩手医科大学歯学会
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