伊豆沼・内沼研究報告
Online ISSN : 2424-2101
Print ISSN : 1881-9559
ISSN-L : 1881-9559
琵琶湖南湖において水草刈り取りが沈水植物群落に与える影響
丸野 慎也浜端 悦治
著者情報
キーワード: 刈り取り, 水草, 水質, 透明度
ジャーナル フリー

2016 年 10 巻 p. 9-19

詳細
抄録

浅い湖沼では,沈水植物群落(以下,水草群落と呼ぶ)が植物プランクトン量の増加を抑えることで水質が改善される.1994年に大渇水が起こり,琵琶湖南湖の水深が大きく低下した.この水位低下が湖底付近の光環境を改善し,水草の生長を促した.水草が増えたことで透明度が上昇し,さらに水草の生長を促し,過剰繁茂を引き起こした.過剰に繁茂した水草は水面を漂い,湖岸に漂着して腐敗し悪臭を放ったことや,船が航行障害を起こすなどの問題が発生した.滋賀県は2011年から水草刈り取り事業を本格的に開始した.我々はこの事業が水草群落に及ぼす影響を明らかにするために魚群探知機を用いて航行調査を行なった.調査は2010年(水草刈り取り事業前)と2012年,2013年に行なった.南湖に10本の測線を1,600 m間隔で東西方向に設定し,魚群探知機を搭載した船で測線上を航行した.魚群探知機で得られた映像に基づいて,水草群落を40 mごとにクロモHydrilla verticillata 群落,センニンモPotamogeton maackianus 群落,2種の混合群落の3タイプに分けた.同時に群落高と水深も記録した.群落タイプと群落高に基づいて,それぞれの地点における現存量の推定値を算出した後,800 mごとに平均値を求めた.そして得られた800 mごとの平均値から,南湖の現存量およびPVI(%)(水草が水塊に占める割合を100分率で表したもの)の分布図をGISを用いて作成した.南湖の現存量とPVI(%)は,2010年が12,757 ± 1,513 tおよび32.8%,2012年が4,236 ± 1,255 tおよび17.1%,2013年が7,836 ± 1,553 tおよび25.7%であった.これらの結果から,現存量とPVI(%)は2010年から2012年にかけて大きく低下したが,2013年には回復したことがわかった.この結果には,刈り取り面積と南湖の水質が関係していると考えられる.2012年の南湖の水質を調べたところ,透明度は2010年,2013年と比較して有意に低く,植物プランクトン量の指標であるChl-aは2013年,2010年と比較して有意に高かった.今回の調査では水質が根こそぎ除去の効果を決める要因とは結論付けられなかった.しかし,水草の現存量の変動には除去面積と植物プランクトン量が関わっていることが示唆された.

著者関連情報
© 2016 公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
前の記事 次の記事
feedback
Top