2019 年 40 巻 2 号 p. 201-204
48歳男性。胃腸炎症状の後に意識消失発作を認め, 当院に搬送された。救急隊到着時収縮期血圧80mmHg台と低値であったため, 胃腸炎による脱水症状と判断し経過観察入院とした。入院後特に誘因のない, 腹痛・呼吸困難感・血圧低下・顔面紅潮を主徴候とする発作を日に1~2回認めた。アナフィラキシーショックに準じてアドレナリン, 抗ヒスタミン薬の投与を行ったところ, 毎回短時間で症状は消失した。10年前から体幹・四肢にびまん性に存在する小褐色斑を認めていたため肥満細胞症を疑い, 抗ヒスタミン薬の定時投与を開始したところ, 発作を認めなくなった。皮疹の生検では真皮上層に肥満細胞の集簇を認め, 肥満細胞症と診断した。肥満細胞症は多彩な症状を認める疾患であるが, アナフィラキシー様症状もその一つである。アレルゲン不明のアナフィラキシーでは肥満細胞症も鑑別に挙げ, 慢性の皮診を認めた際には積極的に生検を考慮すべきである。