2019 年 40 巻 2 号 p. 216-220
肝硬変を伴わない非肝硬変性門脈大循環短絡 (non-cirrhotic portosystemic shunt ; NCPSS) による肝性脳症は稀であり, 報告も少ない。今回我々は, 99歳で初発したNCPSSによる肝性脳症に対して保存的治療で良好な転帰をとった一例を経験したため報告する。患者は99歳男性。傾眠傾向となり, 意識障害が進行したため救急搬送となった。高アンモニア血症がみられ, 肝左葉S3に門脈左外側下区域枝から左肝静脈への門脈大循環短絡が認められた。NCPSSによる肝性脳症が意識障害の原因と判断し, 門脈大循環短絡に対してinterventional radiology (IVR) の施行も検討されたが, 99歳という超高齢であることから保存的治療の方針とした。血中アンモニア値は改善し, それに伴って意識障害も改善したため, 第41病日に施設退院となった。近年ではIVRの有効性についての報告も散見されるが, 背景因子に対する適切な内科的治療介入を含む保存的治療でも良好な転帰を得られる可能性が示唆された。