日本救急医学会関東地方会雑誌
Online ISSN : 2434-2580
Print ISSN : 0287-301X
症例報告
経カテーテル動脈塞栓術後, 胆汁瘻を併発し計画的肝左葉切除を行ったIIIb肝損傷の1例
田中 保平伊澤 祥光渡邊 伸貴山黒 友丘富永 経一郎新庄 貴文太田 真米川 力間藤 卓青木 裕一笹沼 英紀
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 41 巻 2 号 p. 314-317

詳細
抄録

症例は40歳代男性。仕事中に弾き飛ばされた3kgのアルミ塊が胸腹部に当たり受傷した。造影CTで肝内側区域に著明な血管外漏出像を伴う日本外傷学会分類IIIbの肝損傷を認めた。経カテーテル動脈塞栓術で肝動脈の一部を塞栓して止血が得られたため, 非手術治療 (以下NOM) を選択した。しかし入院6日目に胆汁性腹膜炎を併発し, 開腹ドレナージとENBD留置を行い, いったん全身状態は改善した。その後, 腹痛と発熱が再燃し, CTで肝壊死と肝膿瘍を認めたため経皮的ドレナージを施行したが, ドレナージ後も胆汁漏は持続したため肝左葉切除術を施行し, 最終的に良好な経過を得た。 肝損傷に対するNOMの成功率は高いが, NOM中に合併症のため手術が必要になる症例も存在する。特に重症度が高い損傷は合併症の頻度が高く, 手術が必要となる可能性も高いため, 厳重な経過観察と機を逃さぬ対応が必要なことを改めて認識した。

著者関連情報
© 2020 日本救急医学会関東地方会
前の記事 次の記事
feedback
Top