2020 年 41 巻 2 号 p. 344-347
化膿性胸鎖関節炎 (Septic arthritis of sternoclavicular joint ; SASCJ) は化膿性関節炎のうち比較的まれな疾患であり, 縦隔や胸腔内へ波及して重篤化することがある。SASCJに多発性膿瘍を併発し, 集学的治療を要した症例を経験したので報告する。79歳男性, 基礎疾患として未指摘の糖尿病を有する。悪寒戦慄と右頸部痛を自覚し, SASCJと診断され前医で抗菌薬投与及び胸鎖関節の切開排膿ドレナージを行ったが軽快せず, 造影CTで右膿胸, 深頸部膿瘍, 両側腸腰筋膿瘍を指摘された。培養からはメチシリン感受性黄色ブドウ球菌が検出された。第15病日に当施設へ転院後, 胸鎖関節拡大切除と各膿瘍の切開排膿ドレナージを行ったが, 消耗が進み多臓器不全で第80病日に死亡した。SASCJは易感染性素因などリスク因子を有する患者が多く, しばしば血行性の感染波及がみられる。治療初期から全身の感染巣を検索し, 外科的介入を含む治療方針を迅速に決定することが重要である。