生命倫理
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感染症の拡大を防止することと個人の権利を制限すること : インフルエンザ対策などにみられる倫理的な問題について
大北 全俊
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2010 年 20 巻 1 号 p. 94-101

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抄録

本論考では、感染症対策、なかでも薬剤を使用しない非医療的な対策(nonpharmaceutical interventions:NPI)である隔離や検疫などの感染症対策をめぐる倫理的な問題とそのような対策を実施するにあたって必要と考えられる倫理的な配慮について明らかにすることを目的としている。主な倫理的な問題は、感染拡大の防止という社会的な利益を保全するために、個人の移動の自由やプライバシーの保護などの諸権利を制限せざるを得ないところに生じる。社会的利益と個人の権利・利益、両者をなるべく一致させる考えもあるが、個人の権利・利益の制限という事実は依然として残る以上、両者の均衡を図ることが不可避となる。しかし、両者の均衡を実現するということも根本的な困難をはらんでいる以上、当該施策が適切なものであるか否かということを公的に議論する過程や施策の対象となる個人への意見聴取など、両者の均衡を不断に模索する過程が倫理的な配慮として不可欠である。

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2010 日本生命倫理学会
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