生命倫理
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米国における脳死論争の実体概念の分析
峯村 優一
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2014 年 24 巻 1 号 p. 32-41

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抄録
1981年の統一死判定法の制定によって、アメリカでは、脳幹を含む全脳の機能が、不可逆的に停止した時点を人の死とする、全脳基準が法的に認められ、医療機関で用いられてきた。しかし、その後も、「脳死とは何か」あるいは「脳死は人の死か」という脳死の概念問題は、医学・哲学関連の学会誌、シンポジウム、生命倫理に関する大統領委員会などで頻繁に議論されている。本稿では、脳死賛成派のジェームス・バーナットと反対派のアラン・シューモンの見解に焦点を合わせ、脳神経科学上において、脳死の概念問題に関して、これまでどのような議論がされてきたのかを明らかにする。脳神経科学上の見解のみでは、人は本質的にどのような実体であり、人工呼吸器に繋がれた脳死者をどのような存在と考えているのかに関しての説明が不明確であり、そのことが脳死の概念問題にうまく対処できていない要因とも考えられる。そこで、バーナットとシューモンの見解を分析哲学の理論で基礎付けることによって、それぞれの見解は、人をどのような実体とみなすことによって、成り立っているのかを明らかにし、また脳死の概念問題に関するそれぞれの主張に整合性があるのかどうかを、実体概念の分析から考察する。
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2014 日本生命倫理学会
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