2017 年 27 巻 1 号 p. 87-95
子どもに予防接種を受けさせるにあたって保護者の自律的意思決定が可能な状況にあるかを明らかにするため、生命倫理における自律尊重の観点から独自に調査を行った。18歳以下の子をもつ保護者を対象としたアンケートでは、予防接種を受けないまたは迷う理由として副反応の心配やワクチンの安全性への疑問が最も多くあげられたが、接種時のインフォームド・コンセントの機会が十分でない場合が多いことが示された。また、受けない選択をするとなれば保育所や幼稚園・学校から指導が入るなど周囲の目を気にせざるを得ないこともあり、副反応のリスクは自己責任であるのに自己決定できない状況があるといえる。一方で、働く親からは接種の効率化を望む声もあったが、同時接種後の死亡事故への懸念とともに、子どもの健康や病にじっくりと向き合う余裕をもてない子育て環境が背景にあることをうかがわせる。多角的な情報に基づいた自律的選択のために、保護者には行政や医療機関以外にも信頼できるネットワークが必要である。