2019 年 55 巻 2 号 p. 71-81
盲導犬訓練のコストを削減するために、早期適性判断の研究が多く行われてきた。本研究は、改良されたパッシブテスト(MPT)における行動反応と心拍数との関連性を明らかにすることを目的とした。実験対象はラブラドール・レトリーバー51頭、ゴールデン・レトリーバー13頭、ラブラドールとゴールデンのミックス2頭、計66頭を用いた。8ヵ月の訓練の前にMPTを行い、ビデオで行動を記録した。心拍数の変化は、RS 800CX Polar-System心拍数モニターによって記録された。訓練後、中国大連盲導犬訓練センターによって、37頭が盲導犬失格と判定された(FGD)。MPTを用い、犬の活動レベルとオーナーへのアタッチメントを検討した。その結果、盲導犬として合格と判定された候補犬(GD)の活動レベル(2.22±0.10)はFGD(3.12±0.16)より有意に低かった(P<0.001)。アタッチメントレベルには、両群間に有意差は認められなかったが、エピソード1において、GD(3.34 ± 0.15)はFGD(2.78 ± 0.19)より有意に高く(P<0.05)オーナーに対してより安定した愛着度を持つと考えられた。低活動レベル(<2.5)の候補犬では、GDの安静時心拍数はFGDより有意に高かった(P<0.001)。この研究により、活動レベルが低く、オーナーに対する安定した愛着を持ち、安静時の心拍数が高い候補犬が、盲導犬としての訓練性に優れることが示唆された。