2021 年 29 巻 2 号 p. 65-77
本稿の目的は,児童養護施設のトラウマケアにおけるソリューション・フォーカスト・アプローチ(SFA)の活用事例を報告し,トラウマインフォームドケアの視点からその有用性を考察することである。ネグレクト被害児を対象とし,児と担当ケアワーカー(CW)との関係構築を主な目的として,SFAを中心とした支援を行った。結果,トラウマインフォームドケアの4つのケア(「トラウマへの気づき」,「安全性の重視」,「コントロール感の回復」,「ストレングスに基づくアプローチ」)の実践において,SFAの長所志向,未来志向,解決志向が,CWと子どもとの関係構築や,CWと子ども双方のエンパワーメント等に有用であった。今後,児童養護施設におけるTIC実践では被害児本人への心理教育も必要となるであろうが,その際にもSFAの活用が期待される。