ブリーフセラピーは通常,対話により進められる。したがって,言語的コミュニケーションが難しい場合,適用が容易ではない。本研究では,成人のクライエントに絵カードを用いてブリーフセラピーをおこなう試みについて検討した。事例1は抗NMDA受容体脳炎の診断を受けた30代の女性で,主訴は心因性非てんかん発作への対処だった。事例2は自閉スペクトラム症の診断を受けた30代の女性で,主訴は浪費だった。両事例ともに,対話によるブリーフセラピーでは進展が難しかった。そこで,問題の連鎖および例外を図示した絵カードを導入した結果,発作および浪費が改善された。以上より,(1)説明,(2)情報共有,(3)コンプリメント,(4)携帯性,の4点がカードの利点として示唆された。