2014 年 10 巻 1 号 p. 63-68
A病院ICUでは,緊急入室した患者・家族の心理社会的支援に関する情報収集の手助けとしてAguileraの枠組みを参考に「危機リスク評価シート」を作成した.本研究は,シート使用開始から約1年が経過し,シート記載内容を後方視的に検討することで,A病院ICUにおける緊急入室した患者家族の心理社会的支援に関する情報収集での課題を明らかにすることを目的とした.
シートを用いた情報収集では評価対象者を特定するようにしていたが,実際は評価対象者不特定のものが全体の約1/3を占めており,対象者の焦点化が不十分であった.不足情報として挙がった内容には,「病状理解」「サポート体制」「対処規制」の3領域で計19項目のカテゴリーがあり,すべての領域で再カンファレンスまでに追加情報が得られていないカテゴリーが存在していた.それらの情報は意図的に収集しなければ得られない事柄が多く,看護師のコミュニケーション能力の不足が考えられた.以上より,A病院ICU看護師の,患者・家族の心理社会的支援に関する情報収集において,対象の焦点化不足およびコミュニケーションに課題のある事がわかった.