日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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睡眠姿勢と歯の喪失
中道 慧
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2002 年 22 巻 4 号 p. 438-445

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抄録

ヒトの歯に加わる側方力は, 歯質の破壊や歯の移動を引き起こすだけでなく, 歯周病の初発あるいは増悪因子であり, 継続すれば歯の喪失を招く危険性がある.すでに側方力の代表と思われる睡眠姿勢と喪失歯数について96名で調査し, うつ伏せや横向きの睡眠姿勢では, 上向きの睡眠姿勢と比べ, 特に高齢者において, 歯に喪失や重度のう蝕などの障害が生じやすいことが報告されているが詳細ではない.
そこで, 歯科医院に通う患者697名を被験者とし, 睡眠姿勢と歯の喪失との関係について年齢階層を用い検討した.また, 歯周炎の急性進行を示す歯周膿瘍に着目し, 著者が扱った症例で, 発症部位と発症直前の患側頬部の圧迫の有無との関係を調査した。
その結果, うつ伏せや横向きの睡眠姿勢では, 上向きの睡眠姿勢と比べ, 60歳代において歯の喪失が有意に多く (p<0.05) , 男性ではさらに顕著であった (p<0.01) .同様に20歳代の女性では前歯のう蝕 (p<0.05) と臼歯の喪失 (p<0.10) が多かった.また, 歯周膿瘍の発症直前に同側の頬部を睡眠姿勢により圧迫していたものが13例中11例で認められた.
これらのことから, 睡眠姿勢によって生じる側方力には, 歯周炎を中心として, 歯の喪失に荷担する可能性のあることが再確認された.

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