日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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長期経過症例 (10年以上)
菅野 博康
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2004 年 24 巻 1 号 p. 160-169

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抄録

1本の歯の大切さは, 誰もが十分に理解している.歯列弓, 対合関係, 下顎位そして患者さんの背景を含めたなかで, 歯の大切さを考え, どのように対応することが望ましいのかは, 長期経過症例が多くのことを教えてくれる.
歯を削ることはできるだけ控えたい.しかし, 修復する以上は, 修復の要件をできるだけ満たすことが求められる.歯を大切にするために, 歯を十分に削ることが必要となる.
歯を抜くことはできるだけ避けたい.しかし, 歯を口腔内に存続させることが隣在歯, 歯列弓, 咬合さらには全身にも悪い影響を与えることがある.積極的に歯を抜くことも必要となる.
ブラッシング, 食生活, 生活習慣を含めたプラークコントロールによる歯周疾患の治療・予防は, 原因の多くが細菌による感染症であることから, 成果がかなりあがってきている.しかし, 全身状態, 生活環境に変化が生じたとき, これらのプラークコントロールの継続が難しくなり, 他人の手を借りなければ口腔健康の維持はできなくなる.超高齢化社会は, 歯にとっては手ぱなしでは喜べない現実がある.

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