2004 年 24 巻 1 号 p. 42-49
口腔内には唾液, 血液, 浸出液, 呼気中の湿気, 体温による温度の上昇など, 被接着面を汚染したり, 接着強度や硬化時間に影響を与えたりする可能性のある因子が存在する, また, 舌や頬粘膜の存在が口腔内における接着操作を困難にする.口腔内で安定した接着結果を得るためには, これらの因子を排除することが必要である.その目的のために通常はラバーダムが使用されるが, 操作が煩雑であるうえ機能に限界がある.
我々は接着や無菌的処置に適した口腔内環境を容易に作り出せる新しい防湿システム“多機能バキュームチップZOO” (ZOO) を開発した.ZOOには吸引管としての機能, 防湿機能, 口腔内を乾燥させる機能, 舌や頬粘膜を圧排する圧排器としての機能, 開口器としての機能等がすべて組み込まれている.ZOOを口腔内に装着すればこれらの機能が同時に働き, 接着術式に適した環境を口腔内に容易に作り出すことができる.
本論文においてZOOを補綴治療に応用する際の臨床術式を検証し解説する.