2004 年 24 巻 2-3 号 p. 345-350
咬合を理解するうえで重要なことは, 生命の進化の過程や人類の二足歩行を考えることである.なぜなら, 不正咬合や顎関節症という概念は, おそらく人にのみ存在し, 他の動物には無縁であるからである.この論文の趣旨は, 人類の発生から二足歩行, 脳の発育, ストレスマネージメント, 下顎の偏位からくる全身の歪みなどを解説することにある.さらに後半では, 日本人のルーツを考えることによって不正咬合や骨格パターンを考え, 咬合治療のあり方を再確認することにある.これにより, 機械論的なナソロジーからはじめて, 人類学, そして人の発育と適応を考慮した生理学的なナソロジーに変貌していくと考える.