目的:精神障害者への個別支援における保健師が感じる困難とその対処の内容が,精神保健福祉業務経験年数によりどのように異なっているのかを明らかにし,保健師の現任教育への示唆を得て,精神保健福祉活動の質の向上に資することを目的とした.
方法:自治体での精神保健福祉業務経験が“6年以下群”保健師4人,“10年以上群”保健師5人を対象とし,困難を感じた精神障害者事例への支援について半構成面接を実施し,内容について質的記述的に分析した.
結果:困難については“6年以下群”“10年以上群”両群から,支援を望まない本人や家族に介入するむずかしさ,≪近隣からの入院要請の圧力との対峙≫≪本人と近隣の両者の生活を守るむずかしさ≫などが抽出された.一方,≪家族から協力の得られないむずかしさ≫や,かかわりが拒否できない≪公的機関の責任への負担≫,面接や訪問を≪ひとりで対応することのむずかしさ≫≪保健師自身へのサポートの不足≫などは,“6年以下群”から抽出されていた.対処については,“6年以下群”では≪自分の対応できる範囲を自覚し周囲に援助を求める≫,“10年以上群”では,本人・家族・近隣の立場から状況の文脈を解釈し,関係機関に柔軟に働きかける対処方法が抽出された.
考察:“6年以下群”の保健師の現任教育では,精神障害の知識や技術だけでなく,多様な視点で支援を展開する力の獲得に向けて,自分の支援を振り返り,検討する機会の担保が重要である.