2016 年 19 巻 3 号 p. 70-78
目的:保健師が妊娠届出時など妊娠中に把握した母親に対して,支援が必要と考えた理由とその後の支援内容を明らかにすることである.
方法:母子保健活動の実践経験が5年以上を有する保健師10人を対象に半構成的面接を行い,データを質的に分析した.
結果:妊娠中から支援が必要であると考えた理由は6の《カテゴリー》,15の〈サブカテゴリー〉からなり,コアカテゴリーとして【生きづらさを抱えていることの察知】が導き出された.母親への支援内容としては7の《カテゴリー》,32の〈サブカテゴリー〉からなり,コアカテゴリーとして【いつもそばにいていっしょに歩み続ける】が導き出された.支援のなかで感じる思いとして,2の《カテゴリー》,7の〈サブカテゴリー〉が抽出された.
考察:保健師は妊娠中からかかわった母親のようすから【生きづらさを抱えていることの察知】をして支援が必要と考え,常に寄り添い,彼らの思いを重視したかかわりを行っていた.【生きづらさを抱えていることの察知】をした母親への支援は【いつもそばにいていっしょに歩み続ける】という時間をかけた関係づくりが基盤であると考える.保健師は支援において《出産までのタイムリミットが近づくことへの焦り》《子どもの安全が守られないことの危惧》などの思いがあるが,《母親が自分で決めるのをぎりぎりまで待つ》という母親の思いを重視して支援することが彼らの育児の自信を高め虐待予防につながると考える.