2022 年 26 巻 1 号 p. 32-44
科学研究における大規模計算処理の重要性は,シミュレーションの大規模化・高精度化および機械学習への応用という2つの要因から,近年ますます拡大している.それに伴って,大規模計算処理を行う研究用システムに対する要求も複雑化しており,多様な計算需要に応えられる柔軟な研究用システムが求められている.本論文では,豊橋技術科学大学における小規模研究用システムの設計方針,仕様および利用状況について報告する.本システムは,アクセラレータとしてGPUを搭載した小規模クラスタシステムと,仮想化アプリケーション配信システムからなる.ソフトウェアスタックをコンテナ化した上で,計算ノード上の対話型ジョブとしてソフトウェア作成を行うという設計方針によって,小規模クラスタシステムは,多様なソフトウェアスタックを要する各種の計算需要に対応できることを示す.また,仮想化アプリケーション配信システムによって,利用者が手元の端末で容易に各種の商用アプリケーションを利用できることを示す.