コミュニティ政策
Online ISSN : 2186-1692
Print ISSN : 1348-608X
ISSN-L : 1348-608X
自由投稿論文
コミュニティ政策と住民自治
―地域住民組織をめぐる日中制度比較―
単 聯成
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 3 巻 p. 185-204

詳細
抄録

現在、中国はグローバリゼーションの影響下にある。本稿は、グローバリゼーションの状況下にある地域住民組織をめぐる政策を取り上げ、これを日本の制度設計過程と比較するという手法を用い、それらの政策が実施される社会的背景について考察することを目的とする。
日本と中国の共通点の一つは、経済成長がもたらした都市社会構造の急激な変化への対策としてコミュニティ政策を打ち出したという点にあろう。また、都市住民組織の再編を目指して住民自治が強調されている点にも注目したい。それは、日本と中国を比較する際の接点となると考えられる。
日本では、まず、1969年に国内の高度経済成長に対応するコミュニティ政策が策定され、その後の90年代半ば以降、経済のグローバリゼーションに対応して地方分権政策が打ち出された。市町村合併が推進されるなか、「地域自治組織」において「住民自治」をいかに実現するかが課題となっている。日本の場合、両者の間に30年の時間差があるが、中国では、改革開放政策により、国内の市場化と国外の市場化が同時並行的に進んでいるため、それらの変化への対応も同時に求められている。それは、コミュニティ政策および住民自治における日中両国の相違点だと考えられる。
もう1つの相違点は、中国では、権限委譲を含めた法律の整備や政策の調整など、「制度の充実」が特徴であるのに対し、日本では、草の根の住民運動をはじめ、住民活動を積み重ねる「活動の充実」が特徴となっている点である。それは、中国では住民の自主的な活動の展開が、日本では地域住民組織活動の制度的担保を確立してゆくことが今後の課題となることを示唆するものである。

著者関連情報
前の記事 次の記事
feedback
Top