2005 年 19 巻 2 号 p. 103-107
症例は48歳 (1996年当時), 女性. 11歳時に肺結核の罹患歴がある. 約15年前から検診時に右中肺野に異常陰影を指摘されていたが放置していた. 1996年初め頃から咳および黄色の喀痰を認めるようになり, 9月当院内科を受診し胸部CTにて肺アスペルギルス症を疑われた. 喀痰培養では一般細菌, 真菌, 抗酸菌はすべて陰性, また血清抗アスペルギルス抗体, β-Dグルカンは陰性であった. 気管支ファイバーおよびCTガイド下生検でも有意の所見は得られなかった. 術前に確定診断を得られなかったが, 肺真菌症を強く疑い右S6区域切除術を行った. 病理組織所見では壊死組織の周囲に菌糸を認め, その菌糸はGrocott染色陽性でアスペルギルスより太く, 隔壁を有さず直角に分枝する特徴から肺ムコール症と診断した. 現在, 術後約8年を経過しているが再発を認めず健在である.