2005 年 19 巻 2 号 p. 108-112
症例は54歳男性. 2001年5月より歩行時の胸痛を自覚していた. 10月の胸部単純写真で左肺門部腫瘤影を指摘され, CTと併せ左肺門部癌が疑われた. またトレッドミル検査で心電図上ST低下を認め, 冠状動脈造影を施行したところ冠状動脈狭窄を認めた. PTCAを施行したが狭窄部を通過せず, 冠状動脈バイパス術の適応であった. 肺全摘術中・術後の循環動態の安定を考え, 一期的にCABGと肺全摘術を行う方針とした. 胸骨正中切開でアプローチし, 人工心肺下で3枝バイパス術を行い, その後左肺全摘術・縦隔リンパ節郭清を行った. 術後出血を認めたが, 輸血により術後2日目には止血した. 病理は低分化腺癌pT1N1M0病期IIaであった. 術後2年6ヵ月経過したが再発は認めていない. 肺癌に対する早期治療という点で, 今後も虚血性心疾患合併肺癌症例において一期的手術も考慮されるべきと思われた.