2006 年 20 巻 7 号 p. 955-959
症例は73歳女性.検診で,胸部X線写真上の異常陰影を指摘された.胸部CTでは左前縦隔に3×3cmの石灰化を伴った縦隔腫瘍を認めた.胸腔鏡下縦隔腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は4.0×2.7cm大で,石灰化を伴った硬い被膜に覆われ,褐色粥状の内容物を含んでいた.病理所見では石灰沈着を伴う結合織性の被膜に覆われ,内腔には析出した線維素が充満していた.被膜内面の上皮は脱落しており,発生母地不明の縦隔嚢腫であった.腫瘍の局在部位から慢性炎症によるdystrophic calcificationを伴った胸腺嚢腫が疑われた.