2007 年 21 巻 1 号 p. 80-84
移植患者に胸部異常影が出現した場合には感染症の可能性を考えるとともに悪性疾患との鑑別も問題となる.症例は2回の生体腎移植を受けた53歳女性.免疫抑制剤とステロイド剤の内服にて経過中に胸部X線写真上異常影を指摘された.CTでは右S2に径10mmの充実性結節影を認めた.経過観察されたところ僅かに増大し,FDG-PETでstanderdized uptake value(SUV)1時間値3.7,2時間値4.2と悪性を疑わせる所見であった.胸腔鏡下肺部分切除を行い病理所見で肺クリプトコッカス症と診断された.腫瘤影を呈する肺クリプトコッカス症は画像上肺癌と類似することがある.本症例は増大傾向を示し且つFDG-PET陽性であったことからも肺癌との鑑別が困難であった.