日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
胸腔鏡下に摘出した多房性胸腺嚢胞の1例
成田 久仁夫大畑 賀央北山 康彦
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2008 年 22 巻 5 号 p. 765-769

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抄録

症例は25歳,女性.乾性咳嗽と全身倦怠感を主訴に近医を受診し,胸部単純X線写真で左肺門部から左下肺野にかかる大きな異常陰影を指摘された.胸部CTおよびMRI検査では,前縦隔から左胸腔側へ進展する,多房性の嚢胞陰影を確認し,胸腔鏡下に胸腺左葉と嚢腫を摘出した.嚢腫は隔壁により境界された最大径10cmの多房性で,漿液性のものから混濁した膿汁様のやや粘稠な液体を蓄え,内面は比較的平滑であった.病理学的には,周囲に既存の胸腺構造を有し,嚢胞壁には軽度の炎症性変化を認め,重層扁平上皮や円柱上皮に裏打ちされており,Susterらが提唱した多房性胸腺嚢腫と診断した.胸腺腫や悪性腫瘍の合併はなかった.多房性胸腺嚢胞は稀な疾患であり,胸腺癌やセミノーマ,ホジキン病といった悪性腫瘍や,重症筋無力症をはじめ再生不良性貧血,Sjögren症候群等の自己免疫疾患の合併例も報告されており,再発も含めた慎重な経過観察を要する.

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