2008 年 22 巻 7 号 p. 1007-1011
症例は47歳,女性.左前胸部のつっぱり感を主訴に来院.画像上,左側大胸筋後面に3×6cmの腫瘤性病変を認めた.術中迅速病理検査にてデスモイド腫瘍の診断を得たため,腫瘍が接している大胸筋と小胸筋,鎖骨骨膜を含めて切除した.術後2年目にCT検査で,切除部位近くに腫瘤性病変出現と増大傾向を指摘されたため,デスモイド腫瘍再発の診断にて再手術を施行した.腫瘍は腋窩部,腕神経叢近くまで浸潤発育していた.神経損傷を避けるため,手術は可及的切除にとどめ,術後に放射線療法を追加施行した.再手術後3年8ヵ月,再発を認めていない.デスモイド腫瘍の手術に際し,完全切除を目指すことは重要であるが,今回の症例の様に術後のQOLを著しく低下させる可能性がある場合は,他の治療法との併用を考慮にいれながら可及的切除にとどめる選択肢も必要と思われた.