日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
奇静脈葉に起因する自然気胸の1例
和久 利彦渡辺 直樹
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2008 年 22 巻 7 号 p. 1084-1087

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抄録

奇静脈葉のある71歳の男性が右自然気胸で近医へ入院となったが,皮下気腫・縦隔気腫の増悪,左肺の虚脱も認めたため発症後第6病日に当院へ転院となった.胸部CT検査では著明な皮下気腫,縦隔気腫とともに虚脱した奇静脈葉を認めた.胸腔内へ空気漏れが継続することや,進行性に増大する縦隔気腫による血管系の圧迫が原因の頻脈と呼吸状態の悪化が認められたため同日緊急手術を施行した.奇静脈葉の巨大なブラが上縦隔に強固に癒着するとともに破裂をきたし,上縦隔と胸腔内へ空気漏れをしていた.癒着を剥離し肺嚢胞切除をした.異所性奇静脈および奇静脈葉の存在を確認し胸腔ドレーン挿入や胸腔鏡下手術を安全に施行するためにも術直前に胸部CTを施行することは肝要である.奇静脈葉に胸膜の癒着が認められるときは胸腔鏡下手術では技術的に難しく安全のためにも開胸手術へ変更するべきである.

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