2009 年 23 巻 2 号 p. 149-155
症例は74才,男性.検診喀痰細胞診でD判定と胸部X線写真上異常陰影を指摘された.左肺下葉S10にφ4cmの腫瘤を認め,気管支鏡検査で左B10は腫瘤により閉塞されていた.擦過細胞診で扁平上皮癌と診断した.受診の半年前より手足,顔面の浮腫を自覚していた.初診時,低アルブミン血症(1.2g/dL)と蛋白尿(17.2g/day)を認め,ネフローゼ症候群と診断した.発症の経緯から腫瘍随伴性症候群と推測し,肺癌治療による改善が期待された.左肺下葉切除術を施行し,同時に行なった腎生検で膜性腎症と診断した.術後は低アルブミン血症と蛋白尿の改善を認めた.中高年者の膜性腎症によるネフローゼ症候群の1/4に悪性腫瘍が関連し,なかでも肺癌の割合が高いとされている.このような病態において肺癌治療によりネフローゼ症候群の寛解が得られたと報告されていることから,本症例においても肺癌の摘除を行ない,その結果ネフローゼ症候群の改善を得ることができた.