日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
嗄声で発症した縦隔気管支原性嚢胞の1例
小林 尚寛酒井 光昭後藤 行延石川 成美鬼塚 正孝
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2009 年 23 巻 4 号 p. 666-669

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抄録

症例は28歳男性.嗄声,咳嗽,右胸背部痛にて近医を受診し,上気道炎の診断で加療を受けたが改善しなかった.喉頭鏡検査で右声帯麻痺と診断され当院へ紹介受診した.胸部CTで気管右側後壁,食道,右鎖骨下動脈に挟まれる部位に23×16×25mmで内部均一な造影効果を有しない腫瘍を認めた.嚢胞性上縦隔腫瘍による右反回神経麻痺と診断し,右胸腔鏡下に腫瘍摘出術を施行した.病理組織学的診断は気管支原性嚢胞であった.術後6ヵ月の時点では嗄声が残存したが,術後1年目で嗄声は消失し,喉頭鏡所見でも声帯機能の完全回復が認められた.気管支原性嚢胞に嗄声を呈した報告は自験例を含めて6例のみであった.そのうち,完全回復したものは2例のみであった.反回神経近傍にある気管支原性嚢胞は,症状出現後の手術時期によらず不可逆性の嗄声を呈する可能性があり,無症状であっても手術を検討する必要がある.

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