2010 年 24 巻 5 号 p. 873-878
症例は67歳男性.1995年から糖尿病性腎症,慢性腎不全のため維持透析導入,2002年深部静脈血栓症,肺梗塞にて下大静脈フィルター挿入,2008年完全房室ブロックからペースメーカー植え込み,および右冠動脈に90%狭窄あり経皮的冠動脈血行再建術を施行した.その際胸部X線で右上肺野に2.8×2.2cmの結節影を認め,CTガイド下肺生検にて腺癌の診断を得た.cT1N2M0-IIIAと判断し2008年11月前方腋窩切開第4肋間開胸右上葉切除ND2aと有茎肋間筋皮弁による気管支断端被覆を施行した.術後の病理診断はpT1N2M0-IIIAであった.慢性腎不全他,併存疾患を多く抱えていたが重篤な合併症なく術後17日目に独歩退院となった.術後は正常範囲内まで減少した腫瘍マーカーが再上昇を認めたためパクリタキセル®による全身化学療法を4コース施行し,腫瘍マーカーは再度正常範囲内まで減少した.経過中Grade 2の白血球減少以外は有害事象なく術後11ヵ月経過し現在外来にて経過観察中である.