2011 年 25 巻 7 号 p. 776-781
繰り返す気道出血に対して左肺全摘術を施行し,術後肺放線菌症と診断された症例を経験した.症例は62歳男性.前医で気道出血に対して繰り返し動脈塞栓術が行われたが喀血をきたすため紹介となった.左肺全摘術を施行したところ,病理組織学的検査から肺放線菌症と診断された.肺放線菌症は,嫌気性病原体による慢性炎症性肉芽腫性疾患であるが,微生物学的に診断が困難である.ペニシリンに感受性を示すが,耐性菌と共存することで難治性気道出血の原因となり,しばしば外科的治療の対象となる.本症例における臨床経過,手術,病理組織学的検査を,文献的考察を加え報告する.