2013 年 27 巻 7 号 p. 867-871
肺内異物として伏針等の報告があるが,今回我々は,竹串様の肺内異物を伴った肺癌の1手術例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は81歳男性.左肺結節を指摘され精査加療目的に紹介.胸部CTでは左S1+2bに大きさ1.6 cmの結節を認めるほか,以前よりその存在が伺えたS3bの縦隔側から大動脈弓辺縁に向かう線状の構造体を認めた.気管支鏡検査では確定診断に至らず.2ヵ月後の経過観察CTで結節は2.2 cmに増大したため,胸腔鏡下肺生検の方針とした.胸腔鏡で観察すると左上葉縦隔側は炎症性の癒着を認め,肺内から大動脈弓に向かう棒状の硬い構造体を認めた.結節は扁平上皮癌で,構造体とともに摘出すべく上区切除術とリンパ節郭清を行った.硬い構造体はほぼ全体が炭化していたが,一部の縦断面で細胞壁を有する植物細胞に類似した構造が見られた.竹串様の構造体が想像されたが,何であるかの確定には至らなかった.