2014 年 28 巻 2 号 p. 215-220
症例は30歳代女性.眼瞼下垂と嚥下困難を自覚し近医で前縦隔腫瘍と重症筋無力症を指摘された.神経症状に対する内科的治療を先行した後,前縦隔腫瘍の切除を考慮し当科紹介となった.血液学的検査では血清抗アセチルコリン受容体抗体,血清SCC抗原(SCCA)が高値を示し,CT検査で前縦隔腫瘍と胸膜播種が疑われた.生検の結果WHO type B2胸腺腫,正岡IVa期と診断し拡大胸腺胸腺腫摘出,壁側胸膜全摘術と肺,心膜,横隔膜部分切除術を施行した.最終診断はWHO type B2/B3胸腺腫であり,免疫組織学的検索ではSCCAの発現を認めなかった.術後,胸腺腫の病勢と無関係に血清SCCAの著明な上昇を認め,その後減少傾向に転じた.全身検索するも他の悪性腫瘍の合併は認めなかった.胸腺腫において腫瘍マーカーの上昇は稀で血清SCCA高値の本邦報告はこれまでに4例のみであった.