日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
正常胸腺との鑑別困難な画像所見を呈し,切除後に肝転移をきたしたB1型胸腺腫の1例
山崎 成夫岡安 健至鈴木 康弘
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2014 年 28 巻 2 号 p. 249-255

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抄録

胸腺腫は直接浸潤を中心とする進展形式をとることが多く,胸腔外の遠隔転移は稀である.また,WHO組織分類のB1型胸腺腫の予後は比較的良好で再発の頻度は低いとされる.今回我々はB1型胸腺腫が切除後に肝転移をきたした症例を経験した.症例は64歳,女性.61歳時に肺癌に対して左上葉切除を受け,その際に前縦隔病変を同時に切除された.前縦隔病変は正常胸腺と類似した画像所見と肉眼所見を呈していたが,病理組織学的にB1型胸腺腫と診断された.切除3年6ヵ月後に肝左葉に4.0×3.0 cmの病変を認め,肝外側区域切除が行われた.肝病変は病理組織学的にB1型胸腺腫の転移と診断された.肝切除1年4ヵ月後に肝に多発転移が再度出現し,化学療法(ADOC療法)が行われた.その後1年3ヵ月が経過するが無増悪生存中である.B1型胸腺腫であっても切除後に肝転移をきたすことはあり,慎重な経過観察が必要であると考えられた.

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