日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
反回神経分岐部より中枢側に発生した左胸腔内迷走神経原発神経鞘腫の1手術例
大野 貴志鈴木 喜雅門永 太一
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2014 年 28 巻 6 号 p. 730-734

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抄録

症例は50歳代男性.左前胸部痛を主訴に近医受診した.胸部X線にて,左肺門部異常影を指摘され,当院紹介となった.胸部CTにて大動脈弓部左縁下方に3 cm大の境界明瞭な隔壁構造を伴う多房性嚢胞性腫瘤を認めた.胸部MRIでは,T1WIにて筋と同等の低信号,T2WI及び脂肪抑制像にて不均一な高信号を呈した.縦隔良性腫瘍を疑い,手術の方針とした.手術は右側臥位で,分離肺換気のもと,胸腔鏡補助下に行った.腫瘍表面は平滑で,周囲組織への浸潤は認められなかった.左迷走神経と連続し,反回神経分岐部より中枢側に位置していた.術中迅速病理診断にて良性神経鞘腫と診断された.神経切断による反回神経麻痺を危惧し,切開及び内容物掻爬を行った.術後,発声に関する愁訴はないが,左声帯は正中に固定している.再発の兆候はない.胸腔内迷走神経由来の神経鞘腫は比較的まれであり,若干の文献的考察を加えて報告する.

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