2014 年 28 巻 6 号 p. 790-794
再生不良性貧血患者は血小板低下など手術を躊躇させる要因を有している.今回重症再生不良性貧血患者に胸腔鏡下肺葉切除を行った症例を経験した.症例は62歳男性,2007年重症再生不良性貧血と診断され免疫抑制療法が開始された.2009年12月左肺浸潤影が出現し,精査の結果真菌感染症の診断で抗真菌薬による治療が開始された.その後治療効果がないため手術目的で2010年1月紹介となった.血液検査では白血球1,800/μL,ヘモグロビン5.5 g/dL,血小板2,000/μLであった.術直前に血小板と赤血球の輸血を行い,胸腔鏡下左下葉切除を行った.周術期経過は順調で病理学的にはムコール性肉芽腫の診断であった.現在輸血も必要とせず,寛解状態で通院中であり,真菌感染症の再燃も認めていない.胸腔鏡下肺葉切除術は重症再生不良性貧血患者においても周術期管理に留意すれば,安全に遂行できる手術と考えられた.