日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
左肺上葉切除後翌日に心タンポナーデをきたした1例:至適な左上肺静脈切離ラインに関する考察
四元 拓真似鳥 純一長山 和弘安樂 真樹村川 知弘中島 淳
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2015 年 29 巻 7 号 p. 813-817

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抄録

53歳男性.下顎歯肉癌に対し左下顎辺縁切除後3年1ヵ月後CT上,左肺上葉結節影を認め増大傾向を示した.臨床病期T1aN0M0の原発性肺癌を疑い,手術施行.術中迅速病理学的診断にて扁平上皮癌と診断.原発性肺癌の可能性を考え,胸腔鏡下左肺上葉切除,ND2a-1リンパ節郭清を施行した.手術翌日,突然血圧低下,酸素飽和度低下,意識障害を来した.造影CT上,心嚢内に著明な液体貯留像を認め,心タンポナーデと診断した.ドレナージ目的に緊急心膜開窓術施行.血性排液280 mlを認めた.血行動態は安定し肺癌術後8日目に独歩退院した.術中ビデオの振返りでは肺静脈断端の中枢側への落ち込みを認めた.一つの可能性として,Pericardial reflectionを自動縫合器で巻き込み,同部位から持続性出血が起こり心嚢内に貯留したことが考えられた.肺癌術後合併症としての心タンポナーデ発症例は稀であるため報告する.

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