日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
小細胞癌を含む同時性多発肺癌に対して右肺全摘術による完全切除を行った1例
利根 安見子寺師 卓哉田中 伸岳飯森 俊介大迫 努宮原 亮
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2015 年 29 巻 7 号 p. 839-846

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抄録

症例は69歳女性.胸部異常陰影を指摘され当院紹介受診となった.胸部CTで右上葉に空洞を伴う腫瘤,右下葉に石灰化を伴う腫瘤を認めた.気管支鏡下生検ではいずれも軽度炎症細胞と線維化のみで悪性所見は得られなかった.右下葉腫瘤のCT下生検では癌腫と考えられた.右上葉腫瘤は組織学的診断は得られなかったものの,画像上は悪性の可能性が高いと考えられた.多発肺癌,あるいは同側他肺葉に転移を有する下葉肺癌の疑いで胸腔鏡補助下右肺全摘術を施行した.手術検体の病理組織診では,右上葉腫瘤は中分化型扁平上皮癌,右下葉腫瘤は小細胞癌であり同時性多発肺癌であった.リンパ節転移は認めず,完全切除であった.小細胞癌を含む同時性多発肺癌で,リンパ節転移を伴わない症例は報告が少なく,非常に稀な症例と考えられる.今回我々は,小細胞癌を含む同時性多発肺癌に対して右肺全摘術による完全切除を行った1例を経験したので報告する.

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