日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
急速な増大と腫瘍破裂を来たした横隔膜原発滑膜肉腫の1例
藤野 智大棚橋 雅幸雪上 晴弘鈴木 恵理子吉井 直子丹羽 宏
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キーワード: 腫瘍破裂, 横隔膜, 滑膜肉腫
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2015 年 29 巻 7 号 p. 856-862

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抄録

症例は22歳,女性.2ヵ月前に検診で胸部異常陰影を指摘され,近医を受診した.胸部CTで右横隔膜上に6 cm大の腫瘍を認め当科紹介入院.入院数日前より発熱,右前胸部痛が出現,胸部CTで腫瘍の急速増大と胸水の出現を認め,腫瘍破裂が疑われた.治療戦略を決定するためCT下生検を施行したところ,紡錘形細胞主体の腫瘍で術前治療の必要性は低いと判断し,診断・治療目的で緊急腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は横隔膜から発生し,心膜,中下葉に浸潤し,一部自壊していた.腫瘍摘出に加え,右下葉切除,中葉部分切除,心膜横隔膜合併切除再建術を行った.腫瘍よりSYT-SSX融合遺伝子を検出し,横隔膜原発滑膜肉腫と診断した.軟部肉腫は初期治療の選択が重要であり,正確な組織診断の後に適切な治療を行う必要がある.しかし,迅速な対応が必要な状況では,確定診断が得られずとも腫瘍の細胞形態に基づき治療戦略を決定することは有用と考えられる.

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