日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
縦隔リンパ節郭清術後の乳糜心膜症により心タンポナーデを発症した1例
北沢 伸祐中岡 浩二郎小林 尚寛菊池 慎二後藤 行延佐藤 幸夫
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2017 年 31 巻 2 号 p. 181-186

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抄録

乳糜心膜症は心囊腔に乳糜が貯留する病態を指すが,その報告の多くは心臓手術後の合併症であり,非心臓手術後の乳糜心膜症の報告は少ない.今回,縦隔リンパ節郭清術後に心タンポナーデを伴う乳糜心膜症を発症した1例を報告する.症例は67歳,男性.左下葉肺癌術後,右気管傍リンパ節単独再発に対して胸腔鏡下右上縦隔リンパ節郭清術を施行した.術翌日より乳糜胸を発症し,胸膜癒着術により改善した.術後第12病日に急性に血圧低下を認め,心臓超音波検査で心囊水貯留の所見を認めた.直ちに心囊ドレナージを施行,排液は白色混濁調であり乳糜心膜症と診断した.保存的加療では改善せず,右胸腔鏡下胸管結紮・心膜開窓術を行い軽快した.非心臓術後の乳糜心膜症は稀であるが,時に心タンポナーデにより致死的な経過に至る可能性があるため,肺癌術後合併症として認識されておくべき病態である.

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