2017 年 31 巻 4 号 p. 470-476
胸壁発生の類上皮血管内皮腫は非常に稀である.我々は急速に進行した胸壁原発類上皮血管内皮腫の1手術例を経験したので報告する.症例は29歳,女性.出産後より右背部痛が出現し,胸部X線検査で肋骨の異常を指摘されたため当科紹介受診となった.胸部CT検査で溶骨性変化を伴った第7肋骨を中心に右胸壁に約5 cm大の腫瘤と左肺下葉に径約2 cmの腫瘤影を認めた.左肺腫瘤に対する経気管支肺生検で確定診断は得られず,疼痛も高度であったため,右胸壁腫瘍切除・再建術と胸腔鏡下左肺下葉部分切除術を一期的に施行した.術中所見で両肺胸膜下に多数の結節を認め,これらも可及的に切除した.病理組織学的所見から胸壁原発類上皮血管内皮腫,両肺転移と診断した.術後放射線治療,化学療法を行ったが,骨転移,肝転移や悪性胸水・心囊水が出現し,術後12ヵ月目に永眠された.