日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
多彩な合併症と播種再発を繰り返した浸潤性胸腺腫の1例―23年間の治療記録―
高田 昌彦森永 友紀子宮本 良文
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2017 年 31 巻 5 号 p. 667-674

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抄録

症例は68歳男性.1993年生検で胸腺腫と診断され,化学放射線療法後に手術を行ったが,肺動脈浸潤のため腫瘍の可及的切除に終わった.1996年重症筋無力症を発症し,プレドニンにて良好に経過した.同時期に確認された左胸膜播種は徐々に増大したので,2002年肉眼的全摘出術を行った.2007年には多量の血性心囊水をきたし,その細胞診で胸腺腫細胞を認めた.

2010年貧血の精査で早期直腸癌と赤芽球癆が判明し,直腸癌根治術後に赤芽球癆の自然寛解を認めた.同年12月縦隔内に腫瘍を認め,生検で胸腺腫再発と診断した.これに対し化学療法を行ったが効果なく,これを契機に赤芽球癆が再燃した.

2012年肺炎を罹患し低γ-グロブリン血症(Good症候群)が判明した.

その後上記の合併症はよくコントロールされていたが,2016年初回手術から23年後に再発胸腺腫の増大による心不全・呼吸不全で腫瘍死に至った.

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