日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
肺切除の術中損傷による食道胸膜瘻を開窓術とNegative pressure wound therapyの連携により治癒せしめた1例
川崎 成章竹中 裕史東山 将大石黒 太志重光 希公生
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2017 年 31 巻 6 号 p. 729-734

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抄録

肺切除時の食道損傷は重篤な合併症であり,その治療は慎重に行われるべきである.食道損傷後に発生した食道胸膜瘻を開窓術とNegative pressure wound therapy(NPWT)の連携により治癒せしめた1例を経験したので報告する.症例は72歳,男性.咳嗽と発熱を主訴に受診.肺化膿症の診断にて右下葉切除を施行した.右下葉は食道と強固に癒着しており,剥離の際に食道を損傷した.損傷部を縫合し傍心膜脂肪弁を縫着したが,術後5日目に縫合不全を来した.残肺が胸壁と癒着していなかったため,開窓術は行わず再縫合を行い,開窓術に備えて5日間の陽圧換気を行った.再手術後11日目に食道造影検査で食道胸膜瘻を疑う所見が認められたため開窓術を施行した.開窓術後は毎日2回洗浄を行い,低栄養状態とならぬよう静脈栄養に加え経管栄養を併用した.食道胸膜瘻閉鎖後は創部にNPWTを使用した.良好な肉芽の形成により腔の狭小化が得られたため,開窓術後46日目に創部を直接縫合閉鎖し,まもなく退院となった.

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