2017 年 31 巻 6 号 p. 794-799
症例は77歳,女性.右肺S9bに空洞病変を指摘され,1年前に2回の大量喀血を発症して,気管支動脈塞栓(BAE)を施行されたが,再度大量喀血を発症した.CTでは空洞壁が肥厚化してPET-CTで集積を認め,真菌感染症や抗酸菌感染症が否定的であったことから,肺癌を疑い出血コントロールのため肺葉切除を施行した.摘出肺の空洞はB9気管支と連続し,病理報告では空洞壁は気管支上皮で覆われた限局性囊状気管支拡張症であった.また,内腔には放線菌の細菌塊が認められた.本症例の喀血の原因は,気管支拡張症だけではなく,放線菌の感染も一因であると考えられた.拡張した気管支内に放線菌が確認された報告はあるが,末梢の孤立性の囊状気管支拡張症の中に放線菌が認められた症例は報告されていない.空洞性病変で出血がある場合,放線菌感染を伴う気管支拡張症も鑑別診断の一つとして検討しなければならないと考えられた.