2017 年 31 巻 6 号 p. 815-822
胸腺腫には自己免疫性疾患が合併しやすく,時に胸腺腫摘出後に症状が顕在化することがある.胸腺腫摘出後に再生不良性貧血を発症した症例を経験したので報告する.
73歳,女性.前縦隔腫瘍にて紹介され,胸骨正中切開で胸腺胸腺腫摘出術を施行した.正岡分類I期,WHO分類はB1であった.術後半年後,肺炎を発症した.術前には正常範囲内であった血液検査で,汎血球減少を認めた.骨髄穿刺にて骨髄の細胞密度は10~20%,脂肪髄かつ骨髄球/赤芽球の比は5以上であった.Grade 5の再生不良性貧血と診断した.シクロスポリンAを中心とした加療を行ったが,発症4ヵ月後に多臓器不全にて永眠された.
胸腺腫摘出後の再生不良性貧血は非常に稀な病態であるが,易感染性となり致死的となりうる.胸腺腫摘出後の経過観察の際には再発のみならず,自己免疫疾患の合併にも注意を必要とする.