2017 年 31 巻 7 号 p. 944-949
症例は40歳・男性.急性白血病の再発に対して化学療法および臍帯血移植が施行され,再度完全寛解が得られた.その1ヵ月後に真菌感染によると思われる浸潤影が出現したため抗真菌剤での治療が行われたが,病巣は膿瘍を形成するに至った.その後肺膿瘍は胸壁に進展し肋骨破壊による激しい疼痛を伴うまでになり,当科に紹介された.当初感染制御と除痛目的に肺葉切除術と胸壁合併切除を予定したが,手術の困難さや術後膿胸発生の危険も高いと判断し,まず膿瘍腔開放,胸壁合併切除および開窓術を施行した.感染と疼痛のコントロールの後も数ヵ所の細気管支瘻が認められたため,EWSにより責任気管支を塞栓した後に有茎大胸筋皮弁充填による閉窓術を施行した.肺膿瘍の胸壁進展とそれに伴う病的肋骨骨折による激しい疼痛を来した症例に対し,二期的に外科的治療を行うことで肺膿瘍を治癒せしめた症例を経験したので報告した.