日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
多中心性発生と考えられた同時多発胸腺腫の1切除例
稲福 賢司西井 鉄平伊藤 宏之永島 琢也中山 治彦横瀬 智之
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2018 年 32 巻 1 号 p. 78-83

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抄録

症例は69歳,女性.左乳癌に対する乳房切除術の既往あり.乳癌術前より胸部CTで24 mmと8 mmの2つの前縦隔腫瘍を認めた.筋無力症状は認めず,抗アセチルコリンレセプター抗体は陰性であった.5年の経過で,ともに増大傾向を認めたため手術の方針とした.右側アプローチで胸腔鏡下胸腺部分切除術を施行した.縦隔右側に存在した腫瘍は53 mmのtype B1,正岡病期分類II期の胸腺腫,左側は20 mmのmicronodular thymoma with lymphoid stroma,正岡病期分類II期と診断した.これは組織型が異なるため,多中心性発生の同時多発胸腺腫と考えられた.同時多発胸腺腫は稀な疾患であり,その頻度は切除例の2.2%以下と報告されている.胸腺腫は多中心性発生もしくは胸腺内転移の可能性を有しているため,術前より副病変の存在に留意し画像診断を慎重に行い,切除範囲を決定すべきである.

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