日本呼吸器外科学会雑誌
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原著
呼吸器外科手術における術前血清D-dimer値を用いた深部静脈血栓症の検出および周術期管理の検討
師田 瑞樹河野 匡藤森 賢木村 尚子鈴木 聡一郎川島 光明菊永 晋一郎吉村 竜一
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2018 年 32 巻 6 号 p. 680-685

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抄録

【背景】呼吸器外科において肺塞栓のリスクとなる術前の深部静脈血栓症(Deep vein thrombosis:DVT)の有無の評価は重要である.しかし呼吸器外科分野においてD-dimer値を用いたDVTスクリーニング法の検討は少ない.今回術前D-dimer値を用いたDVTの評価とそれに対する周術期管理について検討した.【対象と方法】対象は2013年5月~2015年12月に施行した手術1178例(胸腔鏡手術1153例,開胸手術25例)とし,術前D-dimer値が1.1 μg/ml以上の症例に対して全例下肢静脈エコーを施行した.【結果】260例(22.6%)でD-dimerが異常値を示し,そのうち51例(19.6%,全症例の4%)で術前にDVTを認めた.D-dimer≧1.1でDVT(+)とDVT(-)のD-dimer平均値の比較では3.93 μg/ml(95% CI:2.65-5.19)vs. 2.79 μg/ml(95% CI:2.39-3.19)と有意差を認めた.DVT(+)症例で周術期にヘパリン化施行したのは19例,弾性ストッキング着用のみは23例,残り9例は通常管理であった.術後に肺塞栓を合併した症例は1例も認めなかった.【結論】術後肺塞栓症の予防には潜在的なDVT検出が重要であり,スクリーニングとして術前D-dimer測定は有用と考える.

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