2018 年 32 巻 6 号 p. 771-776
低肺機能患者に対する手術に際してその手術適応の決定は難しい.今回大量喀血のために低肺機能ながら肺葉切除を行った1例を経験したので報告する.症例は62歳男性.31歳で肺結核.51歳で気管支喘息を発症し在宅酸素療法を導入された.60歳で肺炎を生じた時右肺S9の結節があり肺扁平上皮癌と診断した.低肺機能であることより定位放射線照射をされたが,61歳の時に腫瘍の再増大があり化学療法を施行した.4コース目施行中腫瘍より出血し大量喀血した.ユニベント気管内チューブで気管内挿管後右中間気管支幹をバルーンでブロックし人工呼吸管理とした.出血源は腫瘍に侵された肺動脈と診断した.その後2回大量喀血があり,救命目的で右肺下葉切除術を施行した.術後は徐々に回復し術後11週目で在宅酸素療法ながら退院となった.現在術後9年目で外来通院中である.低肺機能であっても大量喀血時には手術療法を一考する価値があると思われる.